売上規模と粗利規模の推移


ホールの売上規模は約15兆円

パチンコ・パチスロの売上規模はどのくらいあるのでしょうか。内外で一般的に使用されている指標のひとつが、公益財団法人日本生産性本部「レジャー白書」に記されている市場規模で、2020年の市場規模は15兆円と算出されています。この市場規模は、貸玉(メダル)料である旨が記されている通り、パチンコで遊ぶプレイヤーが全国のホールで玉やメダルを借りた金額の1年間の総計になります。玉やメダルを貸す行為による売上げは、確かに会計上は売上高として計上されるべきものであり、ホールを経営する企業はそのような会計基準に準拠して処理をしています。ですから、ホール経営企業の決算に記されている売上高については、一部を除いてほぼすべての企業の決算書が「貸玉(メダル)料=売上高」として計上しています。

パチンコ産業はよく、30兆円産業と言われることがありますが、その根拠となったのは1996年1月に総務庁(当時)が発表したホールの事業収入額であり、この発表を受けて「レジャー白書」も数値を修正しています。

また、「レジャー白書2019」では2016年に遡って数値の見直しを行いました。これは、パチンコ産業においてコンピュータ機器を開発・製造、販売するダイコク電機株式会社より、同社製コンピュータシステムを導入している店舗からの実データを基にした情報公開サービス「DK-SIS」による集計データから推定される市場規模との整合性を図ったものです。

売上規模に関するもう一つの考え方

ところで、パチンコ産業の市場規模として貸玉(メダル)料がふさわしいのだろうかという議論があるのをご存知でしょうか。ホールの実質的な売上高は、玉やメダルを貸した金額からプレイヤーが遊技の結果、獲得した玉やメダルを賞品に交換した金額を差し引いたもの、つまり粗利額に相当する金額を指標とするべきという意見です。たしかに、カジノを代表とするゲーミング産業では、プレイヤーが投じた金額から獲得した金額を引いたものを売上高として計上するのが一般的です。ラスベガスやマカオ、シンガポールのカジノ業界の市場規模が各々、約102億米ドル(約1兆399億円、2013年)、約3607億マカオパタカ(約4兆6,897億円、同年)、約52億シンガポールドル(約4,193億円、同年)だと言われていますが、それは上記の会計処理によるものであることに注意が必要です。カジノ産業の市場規模と日本のパチンコ産業の市場規模と単純に比較して、日本は賭博天国だなどという批判がなされる場合がよくありますが、対象としている数値が異なっていては比較できるわけがありません。

ダイコク電機が提唱する粗利規模

そのためダイコク電機株式会社では、「DK-SIS」による集計データから推定される市場規模と粗利規模の両方を発表しています。

同社「DK-SIS白書2021年版」によると、2020年の市場規模・粗利規模はそれぞれ14兆6000億円・2兆3500億円と推定されています。「DK-SIS白書」では、粗利規模がパチンコ産業の市場規模を表す最も重要な指標であるとしていますが、その粗利規模は年々縮小傾向が続いており、パチンコ産業を取り巻く環境が年々厳しくなっていると分析されています。

なお、全国のホールの市場規模算出については、経済産業省の「特定サービス産業実態調査」や経済センサスの数値を元にした推計、プリペイドシステムの供給企業の数値を使った推計、さらにはホール経営企業の売上高を累積しての推計なども可能です。

レジャー白書 DK-SIS白書
売上高 売上高 粗利
2014 245,040 255,000 39,100
2015 232,290 247,000 38,100
2016 227,000 227,000 36,600
2017 214,000 214,000 35,200
2018 207,000 207,000 33,800
2019 200,000 200,000 32,400
2020 146,000 146,000 23,500

※レジャー白書とDK-SIS白書の比較

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