反社会的勢力への対策

反社会的勢力との歴史

ホール営業は射幸性が伴う娯楽という側面があるために、古くから賭博に絡む反社会的勢力との関係が生じやすいところがありました。また、大きな売上げを持っている一方で、脱税などにより不正な利益を得ているのではないか、賞品買取りという違法行為を行っているのではないかというマイナスイメージが根強いこともあって、反社会的勢力はホール経営者のこうした弱みに付け込んできました。

繁華街型の接客業などにありがちな用心棒代やみかじめ料の要求、各種の物品購入の強要のほか、射倖心の伴う遊びを提供するホールに対して、例えば賞品の転売利益を得るために自らが経営する賞品買取所の利用を求めるケースなどもありました。こうしたさまざまな口実でもって近寄ってくる反社会的勢力ですが、その要求に応じないホール経営者が様々な嫌がらせ行為を受けたこともあります。一方で、ホール経営者の側にも、お客様とのトラブル解決のためやゴト師集団から店を守るために、反社会的勢力の力を利用したケースも過去にはありました。

昭和20年代後半、パチンコ店でタバコなどを獲得した客から、路上でこれを買い取る「景品買い」がパチンコ店の周辺に登場。

また、かなり古い話になりますが、昭和20年代から30年代なかばにかけては、パチンコ機の射幸性の高まりとともに業界は大いに隆盛する半面、賞品の買取りや買戻しといったところに反社会的勢力が介入することで、利益を上げる例や暴力沙汰が発生し、各地で社会問題化したことがあります。特に路上での「景品買い」は、ホールの知らないところで起こっていることが多かったのですが、結果的にはホール営業への全体規制、具体的には射幸性の高い連発式遊技機の禁止につながり、業界は大きな打撃を受けました。現在、各自治体で制定している「迷惑防止条例」は、昭和30年代には「ぐれん隊防止条例」とも呼ばれ、当時、社会問題になっていたぐれん隊による粗暴行為や迷惑行為の防止に重点が置かれたものですが、この中には路上における「景品買い」を禁じる規定も盛り込まれるほどでした。

この昭和20年代後半からの一連の出来事は、その後の業界の反省につながります。路上での「景品買い」が取り扱いやすい賞品の提供を規制した地域が出てきたほか、ある地域では、身体障害者や未亡人などの雇用を促進することを目的の一つとした団体を結成し、ここで賞品の取り扱いを行ない、反社会的勢力との関係を断ち切る仕組みを構築しました。また、価値の低い賞品が同じホールと賞品買取所を行き来する状態が反社会的勢力の介入の口実になっていることから、こうした状態を解消しようというシステムが考案され、流通業者などが設立した団体と企業によって取り組む仕組みが普及しています。都内のホールでは金地金を使った賞品の提供を開始する際、全都的に反社会的勢力との関係を断ち切っています。

継続的に行なわれる排除活動

しかし、このような反社会的勢力とのつながりが発生する怖れは、賞品問題に限らず存在します。また、一度関係を断ち切っても、ホール経営者などへの威嚇行為が現実に発生するほか、さまざまな口実でもって再関与を強要される怖れが今でもあります。いずれにしても、彼らの重要な活動資金を業界が提供するわけにはいかないのですが、これは業界の努力だけで対応できる事柄ではありません。特に、警察行政のバックアップが不可欠です。

そこで警察行政としては、反社会的勢力が関係する事件の取り締まりや摘発を重点的に行なうなど、ホール営業と反社会的勢力とのつながりを断つための積極的な支援を行ってきました。地域の業界団体の会合でも警察行政の担当官が暴排条例の遵守を促す講話を行うなどし、これを受けた業界団体でも、反社会的勢力の排除決議を採択するなどしています。そのための協議会、連絡会を結成した地域もあります。一連の反社会的勢力の排除活動、再関与の防止活動は、継続的に取り組まれているテーマのひとつです。

また、パチンコ攻略法詐欺やゴト師集団の収益も反社会的勢力に流れている懸念もあることから、業界団体ではこの撲滅運動にも取り組んでいます。