遊技機の不正に対する取組み

ゴト行為とは

遊技機が不正に改造される事例には、大きく分けて2つのタイプがあります。ひとつが、「ゴト師」と呼ばれる不正集団が遊技機に不正を働くことでホール側の利益を奪い取るというもの。そして、残念なことにホール側が遊技機を勝手に改造し、本来の性能を変えて不正に利益を上げるというものです。

ゴト師の歴史は、パチンコの歴史とほぼ同じ長さを持っています。昭和20年代に問題になったのは、市販されている安価なベアリング球をホールに持ち込んで遊ぶという「ヤミ玉」問題。ホール側は玉の大きさで選別する装置を導入したり、遊技球に刻印を入れるなどして対応しましたが、この問題には長く頭を悩ませました。今では安価なベアリング球の持ち込みはありませんが、貸玉料金の違う他店の玉やメダル、または閉店したホールの玉を大量に持ち込まれる手口が今でも存在しています。また、同じく昭和20年代から登場した、磁石で玉を誘導して入賞口に導く「磁石使い」による被害も、未だにあります。

1990年代の半ばに登場したゴト器具。遊技機のロムや配線を不正なものと取り替えるなどして出玉を獲得する、「ハイテクゴト」の初期の不正パーツ。

こうしたゴト師による不正は、遊技機の電子化とともに姿を変えています。遊技機が電子化した当初は、電子ライターやトランシーバーでスタートチャッカーが反応することを利用した電波ゴトが登場。その後は、技術の発達とともにゴト師の手口もより悪質巧妙化の一途を辿り、20年前ぐらい前からは、例えばホールの閉店後に侵入し遊技機のチップを不正なものに交換したり、ホールスタッフを脅したり誘惑したりして不正チップの仕込みを手伝わせる、といった不正事犯が数多く報告されるようになりました。また、遊技機の玉やメダルの払い出し部分を電波や針金などで誤作動させる手口や、筐体の構造やプログラムの隙を狙って不正に大当たり状態にするといった手口もあります。こうした一連の不正は、遊技機のみならず、玉計数機への不正や計数レシートの偽造、台間玉貸機からの現金抜き取りなど、店舗内のあらゆるところが狙われる状況が続いています。

また、ごく一部ではありますが、ホール側が勝手に遊技機の射幸性を高め、プレイヤーを過激に煽って売上を上げる不正改造の事例も出ています。たとえ経営者が知らないところでホールのスタッフがゴト師と結託した不正でも、一般のプレイヤーからみると店側が行った不正として、何ら変わることはありません。いずれにしても、こうした不公正な状態を放置していては、ホール営業が成り立たないのは当たり前です。ホール内、あるいは遊技機の流通過程において不正が入り込む余地のないよう、万全のセキュリティー体制を構築する必要があるとともに、遊技機を取り扱う関係者には高い倫理観やモラルをもって日常業務に取り組む姿勢が求められます。

ゴト行為に対する業界の対応策

そこで業界では、ホール、メーカー、販社、周辺機器メーカーそれぞれが所属する業界団体が連携して情報交換や具体的対策の取り組みを行っています。例えば、「玉やメダルの出方がどうもおかしい」「特定の遊技機がいかにも出るように宣伝している」など、業界内外から不正に関する様々な情報を収集している「遊技産業不正対策情報機構(PSIO)」という機関があります。PSIOは一般および業界関係者の双方から不正の投稿を受け付ける通信網と、関係団体のあいだで情報を交換する通信網で構成されています。PSIOに投稿された不正情報は月ごとに整理され、その後、各都道府県の警察本部に提供されることになっています。寄せられた不正情報はデータベース化され、いつでも分析・検討できるよう蓄積されています。

一方、業界内におけるすべての不正情報を集約し研究・検証のうえ、具体的な対策づくりにつなげているのが、業界団体間で組織される委員会や連絡会議。こうした組織でもって、開発・設計段階から不正に強い遊技機造りを目的に議論を続けています。また、メーカーで製造された遊技機がホールに納品するまでの過程において、不正が入り込まないよう統括管理するのが「遊技機取扱主任者」の制度です。遊技機の取り扱いについて講習・試験を受けて一定の知識と技能を持ったこの主任者が、遊技機の移動・設置時に不正なものがないか目視による点検確認を行うことになっています。

業界外の機関からも監視が行われています。第三者機関「一般社団法人遊技産業健全化推進機構」は、遊技機や、計数機等の周辺機器に関する不正改造を根絶するための恒常的な検査体制を整え、全国のホールに対して営業時間の内外を問わず、随時無通知による立入検査を実施しています。また2015年からは遊技くぎに不正が施されていないかを一般客と同様に遊技して調査する「遊技機性能調査」も行なっています。2007年から開始された機構による検査数は、10年間で累計2万店以上に及んでいます。この他に、各都道府県にあるホールの組合が主体となって行う立入検査があるほか、外部のセキュリティー会社に対策を委託したり、ホール企業内に専門部署を設けているケースもあります。このように業界は、様々な角度から多層的に不正根絶の取り組みを行っています。